メディア論から読書会を作る

2024年2月6日のニュースレター
彗星ブッククラブ 2024.02.07
誰でも

皆さんこんにちは、森 大那です。合同会社彗星通商は、21世紀にふさわしい最高の読書体験を創造するため、【オールインワンの読書体験】を提供する新サービス『彗星ブッククラブ』を2023年11月1日に開始しました。

このニュースレターでは、以下の2種類の情報をまとめていきます。

  • サブスクサービス『彗星ブッククラブ』の最新情報本の著者インタビュー動画情報、読書会レポート、ウェブサイトアップデートのお知らせ

  • YouTube&Twitterで配信している話題、それぞれのアカウントで発信した内容のまとめと補足

本から刺激されるクリエイターから、隙間時間に読書を楽しむ本好きまで、読書を愛する人に、きっと参考になるはずです。

追記:3週間ぶりの配信となりご迷惑をおかけしました。来週より毎週配信となります。

目次

  • 利用ガイド

  • メンテナンス情報

  • インタビュー情報

  • 読書会情報

  • YouTube&Twitterまとめ

利用ガイド

すぐに伝わる彗星ブッククラブの魅力は、解説動画やインタビュー動画といった映像コンテンツにありますが、やはり醍醐味は、月末に開催されるオンライン読書会。

Zoomを使ったこの読書会では、カメラはオフでも参加可能、マイクオフも参加可能、まだ読んでいない本の読書会でもご参加いただけます。

たびたび、読書会初参加の会員様から、参加方法についてのお問い合わせをいただきます。
今回は、まだ読書会に参加されたことのない方のために、お問合せの多い部分についてあらためて参加方法をお知らせします。

津原泰水『夢分けの船』読書会を例にとって見てみましょう。
各書籍詳細ページから予約後、予約画面もしくはマイページ「予約済み読書会」から、予約した読書会のZoomリンクが確認できます。

マイページにはリンクの下に、入室用パスワードと、万が一入室できなかった際の対応策として、運営宛の連絡先が掲載されています。

(この読書会は終了済み)

(この読書会は終了済み)

当日の開催時間になったら、こちらのリンクとパスワードでご入室ください。

話す内容はさまざまですが、まずは参加者の方々から、作品の全体的な感想をお聞きしています。

その際、該当の本を読んでいなかったり、最後まで読み切れていないくても問題ありません。
「どんな作品なのか気になって参加した」とお伝えいただければ、まだ読んでいない方へ魅力が伝わるように話題を展開していきます。

魅力的だった箇所、わからなかった部分、良いと思ったけれどその理由が言葉にならない部分……
どんな感想でも、その人にしか語れない感想です。
例えごく簡単な感想でも、他の参加者や司会である私が反応すると、新たな発見が生まれることも少なくありません。

また、思いついたらぜひお聞きしたいのが、
「読んでいる時、こんな作品を思い出した」
という感想です。
本を読んでいると、ふと、別の本、別の映画、別の音楽などを思い出すことがあります。もし該当本と関係がなくても、問題ありません。そこには、本人がまだ気づかない関連が隠されているのかもしれません。

音声やチャット欄で、読書のヒントを投げ込んでみてください。

メンテナンス情報

・読書会予約後、予約画面とマイページに表示されているZoomリンクがPC/スマートフォンともに画面外にはみ出すエラーを修正。

インタビュー情報

今月の5冊『無敵の犬の夜』の作者、小泉綾子さんへのインタビューは、もうご覧になりましたか?
暴力性と繊細さが同居するこの小説がいかにできあがったのか、小泉さんにさまざまな角度からお答えいただきました。

今月はもうおひとり、『英国本屋めぐり』訳者のユウコ・ペリーさんへのインタビューが完了していますが、諸事情により映像配信はもう少し先延ばしとなりそうです。
配信日が決定次第、彗星ブッククラブトップページのお知らせ欄、そしてTwitterで告知します。

読書会情報

2月の【今月の5冊】それぞれの読書会が終了しました。

ルイーズ・ボランド『英国本屋めぐり』のいつまでも続く楽しさ、津原泰水『夢分けの船』の筆舌つくしがたい美しさ、堀江敏幸『中継地にて』の思索の深さを語り合い、1時間(残れる方がいらっしゃる場合には延長して1時間半)ではとても語り尽くせない、発見にみちた時間となりました。

小泉綾子『無敵の犬の夜』は余白の多さに注目が集まり、永井みみ『ジョニ黒』は食の描写と「横浜」という場所性が話題に。

どの回も、参加者の知識が共有されて盛り上がる場面、そして創作を志す参加者にとってはヒントがいくつも生まれる読書会となりました。

【来月の5冊】のスケジュールは数日中に公開予定。
3月の月末も、彗星ブッククラブの読書会をお楽しみください。

YouTube&Twitterまとめ

1月の5冊について、Twitterにて感想をいただきました。こちらでもご紹介いたします。

Tanish
@tomi__koumi
彗星ブッククラブの12月の『近畿地方のある場所について』は面白かった。森大那の言葉を借りるなら「リアリティを持った怪異が上手くデザインされている」←端的に言うとこれに尽きる。
読了後に改めて観る著者、背筋のインタビューがまたカッコよくて倒れそうになりました。…
2024/01/24 14:16
2Retweet 5Likes

彗星ブッククラブの12月の『近畿地方のある場所について』は面白かった。森大那の言葉を借りるなら「リアリティを持った怪異が上手くデザインされている」←端的に言うとこれに尽きる。
読了後に改めて観る著者、背筋のインタビューがまたカッコよくて倒れそうになりました。
著者の言葉にあった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『4TH KIND』を観てみたい。
森大那のインタビューの精度が高いので読んだ後でも更に深く楽しめるのも、おつ。
並べられていくネット上の冷たく乾いた怖さに吸い込まれて行く感じがクールで大好物なテイスト。
ちなみに11月の彗星ブッククラブお奨めの『禍』の著者のインタビューも最高でした。(もちろん本も)
Tanish
@tomi__koumi
11月も、12月も、1月も、どの本もハズレがなかったんです。
すべて面白かった…
2月の本も届きました。

本を読むことが素直に楽しい。
それを思い出しています。…
彗星ブッククラブ @SuiseiBC
【解説動画公開】 来月の5冊より、以下3冊の解説動画が配信されました。 会員の方はそれぞれの書籍詳細ページよりお楽しみください。 ■ 谷川俊太郎『二十億光年の孤独』 ■ 『スタインベック短篇集』 ■ 『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』 https://t.co/DewicEiReB
2024/01/24 14:39
2Retweet 14Likes
11月も、12月も、1月も、どの本もハズレがなかったんです。
すべて面白かった…
2月の本も届きました。
本を読むことが素直に楽しい。
それを思い出しています。
森大那がファシリテーターを務める読書会が想像の遥か上を行っていて、リアルに解説者や同席者と会話しながら、深いアナライズとよもやま話、雑談が出来るのが最高に楽しく、
ホストクラブの初回に行くくらいだったら、単行本1冊の値段で彗星ブッククラブの全てのコンテンツを暖かい家の中で共有した方がよっぽど脳の健康に良いと感じました。

これまでの出版世界に存在しなかった、新しいコンテンツを隅々まで楽しんでいただけて、とても嬉しいです。

毎月末開催しているZoomを使った読書会は、カメラオフでもOK、マイクを使わずチャット欄にコメントを入れるだけでもOK。
まだ参加されたことがない方も、該当本を読んでいなくても、どうぞお気軽にご参加ください。

***

これまで連載してきた、YouTubeのコメント欄と読書会の関係の考察、今回が最終回です。

前回は哲学者・森岡正博『意識通信』(1993年)を参考に、ネットユーザーの行動傾向の3分類を見ました。

テキストベースの読書会と捉えられるYouTubeのコメント欄。
そのあり方を参考に、これからどんな読書会を作っていくべきなのか、考えてみましょう。

***

・YouTubeならではのユーザーの生態

日本のYouTubeチャンネルにおいては、

本の話題でトリビアを語る場合:トリビアばかりが視聴者から求められ、本文を「読む」ことで得られるものについてはコメントされない。

Vlog的性質が強い:コメントの話題も日常へのレスポンスになりやすい。

専門性が強い:コメントの必要を感じない。

上記の傾向がある。
この3つがうまくバランスを取った、
ミーハー度の強くない・ライトすぎない・トリビアリズムに陥らない、という性格のチャンネルで、成功している例はあるだろうか?

古今東西の名著を自己啓発の文脈で解説するアバタローのチャンネルは、この点で大きく成功している前例と言える。

このチャンネルのメインターゲットは、日常的に本を読む習慣がある層ではない。
読書習慣はないけれど、本に対してちょっと興味はあり、自己啓発動画を見る習慣はある、という層に向け古今東西の名著を語るという切り口で配信している。
自己啓発色が強すぎ、彗星で真似したくはない路線ではあるものの、『意識通信』における「発散」のコメント(この場合は自分の体験の言語化)を増加させる点で理想的なチャンネルと言える。

ところで、ユーザーがYouTubeを視聴する目的のなかで、無視できない、いやむしろ大きな目的となっているものに、「救いを見出したい」がある。
大袈裟に聞こえるが、Vlog・自己啓発路線のチャンネルのコメントを見ると、これが痛いほどわかる。

可処分時間がたくさんあるわけじゃない。
かといって優れたエンタメや芸術を鑑賞することでは心は満たされない。
動画投稿者の顔は見えなくてもいいから、誰かの日常的な発信で、自分の時間を満たしたい。動画の内容よりはむしろ、「いつものあの人」がそこにいるのを確認するだけでいい。その人は、自分を含む誰かのためにわざわざ動画を作り、発表してくれている。それがわかるだけで、心が満たされる。

そしてできれば、弱い自分に1歩分の(2歩や3歩では手一杯になってしまうから、1歩分の)救い、肯定、アドバイスが欲しい。

そうして満たされた後に、トリビア的動画で知的好奇心も満たせたら、なお良い。

YouTubeというメディアは、ある時期(テレビの代わりにYouTubeを見る人が増えた頃)を境に、この気持ちに応えるメディアとなった。

そこで振り返ってみよう。
想定できる「取り込み」の具体例の中で最も中心的なユーザー行動は、例えば「投稿者への質問コメント・リクエスト」といった能動的行動ではなく、「動画を定期的に見ること」という受動行為そのものだと考えられる。
すると、動画を見ること自体が「取り込み」で、その動画の内容に触発されてコメントすることが「発散」になる。

現在の日本の(しかしおそらく日本には限らない)読書・教養系チャンネルの視聴者の行動傾向は、このように言語化できるだろう。

ということは、Vlog・自己啓発・トリビア的でない方向性で大きく盛り上がるとは期待できない、ということがわかる。

さらに言うなら、この3つのジャンルは伸ばしていくべきだ。
【視聴(取り込み)】→【コメント(発散)】という習慣を持ったユーザーが増加し、コメントが活発化する傾向をさらに押し上げ、さらに、これまでコメントのつきにくかったジャンルにまで手を拡げる可能性は、充分に現実的な期待であると言っていい。

こんなふうに、森岡理論でメディアを考えることが、YouTubeの性質を読書会に応用することとなる。
ここからはいよいよ、新しい読書会の提案に入ろう。

・YouTubeで読書会が配信されない理由

YouTubeのコメント環境を踏まえ、発散・取り込み・共有を読書会という場に見出すとしたら、どんな反応があり得るだろう?

発散=本の感想、第一印象、他の参加者に対するコメント

取り込み=疑問、質問

共有=トリビア、補足的な考え方、新たな創造

ひとまずこのような対応関係が考えられる。
そして、これまでの経験から断言できるのは、このうちどれか一つにでも火がつけば、参加者の思考が白熱することだ。

しかし、読書会は常に話題が変化するコミュニケーションだ。
上のようなトリガーを引くには、具体的にはどうすればいいだろうか?

『意識通信』で実現していない点のひとつが、「統合メディアによる、ホスト介入型グループメディア」だ。
いや正確に言えば、実現していないのは「統合メディア」だ。簡単に言えば、液晶画面の平面性を超え、今日のメタバースのような立体空間で五感を活用できるメディアを本書では「統合メディア」と呼んでいる。

対して、「ホスト介入型グループメディア」だけを抜き出せば、こちらはすでに実現されている。
ホストたる人物がそのグループの中心になり、参加者の活動を活発化させるメディアがそれだ。
ラジオのトークイン番組で、番組司会者がリスナーのメッセージを読み上げることは昔からある具体例だ。
今日では、YouTubeのライブ配信、メタバース上でのイベントなどがあり、森岡の構想した「ホスト介入型グループメディア」の誕生に、社会は着々と近づいているのだ。

読書会を「ホスト介入型グループメディア」と考えるとき、ひとつのアイディアが浮かぶ。
YouTubeでの定期的な読書会ライブだ。

これは、意外にも前例が少ない。しかも、英語圏においてもだ。
実は、ライブ配信する読書会は、YouTube上での無料配信ではなく、外部の読書会サイト&アプリ(bookclubs.comfableなど)、有料であればPatreonなどを使ったメンバーシップの特典として開催されることがほとんどだ。
(これまでたびたび話題に出しているエマは、一度、友人とトルストイについて語る読書会配信はあったが、基本はライブ配信ではなくテキストベースの読書会をfableで開催している。)

外部サービスばかりが選ばれる理由として考えられるのは、YouTubeの現行の機能がコミュニティ性の面で恐ろしく貧弱なことだ。

有料メンバーシップ機能を提供してはいるが、これはユーザー間の親交を深める機能ではない。
また、ライブ中のチャットは流動性の高さに最適化されたUIではあるが、熟慮したコメントの読み書きには適さず、記録は残るが、後から読み返すのには使えない。
それならむしろ、外部サービスに誘導し、音声&テキストでじっくりと語り合う方がいい、という判断になるのは当然だろう。

しかしそうは言っても、YouTubeはモンスター級のプラットフォームだ。
有効に使う手段があるなら、それを使うに越したことはない。

・人の思考に火をつけるものは何か?

そこで、彗星ブッククラブの取り組みとして、YouTube上での読書会ライブ配信を企画する。
それも、定期的なものだ。
日本ではまだ、読書会がどんなものか、認知されているとは言い難い。
読書会の存在を知る人は増えてきた。しかし参加に至らない人が多い。
参加しない理由として、私がこれまで聞いてきたケースで最も多かったパターンは、人と話すのが苦手、ではなく、「読書会でどんな会話が交わされるのかわからなくて不安」だった。

彗星ブッククラブのYouTube読書会は、「レギュラーメンバー」が出演する。
メンバーには、事前に簡単な脚本を用意している。
そこに書かれてあるのは、【発散・取り込み・共有】の「技」だ。
第一印象を語る。
疑問に思ったところ、不満に思った点を語る。
トリビアを語る。
本の中から思いついたアイディアを語る。

それだけではなく、私がこれまでの経験で確信した、「参加者が最も白熱する瞬間」も入れる。

それは、

  • 自分の第一印象が覆った時

  • 自分の中に新たなフォルダができた時

この2種類だ。
(それぞれの詳細については、今後ニュースレターで語ることになるだろう)

メンバーがこれらの内容を意識的に会話に導入する。
そうして、何を語ればいいのかのサンプルが、視聴者の中で積み重なる。
あまりにもお手本通りすぎてはいけないから、大まかな枠だけ脚本に書いて、あとはメンバーに自由に具体例を作ってもらうのがいいだろう。

つまりこれは、単に視聴者に向けてお手本を見せるのではなく、ネット上の反応の分類(『意識通信』の3分類)を前提に読書会のモデルケースを構築・公開するという方法だ。

すでにライブ配信の準備を進めている。
最初はレギュラーメンバーで集まってZoomで読書会を開催し、その模様を収録した映像をYouTubeで配信することになる予定だ。

YouTubeのコメント欄を、「読書会」という観点からさまざまな角度で見てきた。
結果として、彗星ブッククラブにできる、読者発の文化を創り、読書体験をより楽しいものへと鍛え上げる最適な方法が見つかった。
その成果は、後日あらためてこのニュースレターで報告できるだろう。

***

彗星ブッククラブは月額¥1,980でご利用いただけます。
本を購入した翌月は、月額が¥1,780となります。

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次回のニュースレターは、2月14日21時に配信です。

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